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パラリンピックとデフリンピック ー聴覚障害と社会ー

2024 12/08
障害福祉
2024年5月14日2024年12月8日
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パラリンピックとデフリンピック

2021年は1年遅れで、東京パラリンピックが開催され、スポーツを通じた国際交流、障害理解の促進が期待されます。

パラリンピックには、機能障害、視覚障害、知的障害のクラスが設けられていますが、聴覚障害のクラスはありません。

聴覚障害者は、主に国際聴覚障害者スポーツ協会、ICSD(International Committee of Sports for the Deaf)が主催するデフリンピックがその舞台となります。
第24回夏季大会は2022年4月にブラジルで開催されました。

そして来る2025年大会は東京で開催されることが決定しています。

デフリンピック東京大会のサイトはこちら!

なぜデフリンピック?

オリンピックとデフリンピックが別々に開催されるのは、1995年にIPC(国際パラリンピック委員会)からICSDが脱退したためです。


国際ろうスポーツ委員会 会長ドナルダ・アモンズ(Dr. Donalda K. Ammons 1953)は、当時を振り返り、IPCから、ろう選手の参加増加に伴う手話通訳の”経費負担の増額”か、ろう者選手の参加を制限するために”競技種目の縮小するか”のいずれかを迫られたことが脱退を決意した理由であると報告しています。


その後、ICSDにより「国際ろう者スポーツ大会」は独自に運営され、2001年にIOC(国際オリンピック委員会)から「デフリンピック」の名称を正式に認められます。

スポーツとろう者

アモンズは、前出の報告書で、

彼ら(ろう者)は長らく、コミュニケーションの困難を味わい続け、わけても、『聾』であるがゆえに、社会の中でやっている能力が劣ると誤解される経験を重ね、否定的なステレオタイプを押し付けられてきた。『おし、つんぼ』という古い言葉があるが、これは『口のきけない愚鈍な者』、『馬鹿』、『能力がない』という意味を含んでいる。世間は常にろう者を知的に劣った、言語の理解出来ない者とみなし、市民として周縁化した存在として扱ってきた。

一般財団法人 全日本ろうあ連盟 スポーツ委員会 ウェブサイトより

と述べ、聴覚障害者が不当に社会から疎外されてきたことを憂いています。

「聞こえなくても、スポーツはできるでしょ?」

とお考えの方も多いかもしれません。

しかし、スポーツの多くが、音のコミュニケーションに大きく依存しています。

例えば、競技中の審判の意思表示は、音声やホイッスルで示されます。
陸上競技であればスタート時のピストルの音は非常に重要です。
団体競技では選手同士は声で意思疎通します。

いっしょにスポーツを楽しむには、会の運営だけでなく競技そのものにも、聞こえない、聞こえにくいことに対する配慮が必要です。

聴覚障害者は、ある時は運動機能に支障がない健常者と見なされ、ある時はコミュニケーションが難しい人と見なされ、またある時は根拠なく劣った人と見なされるなど、運動障害や機能障害を中心とする他の障害者とは異なった特有の生きづらさを抱えています。

インクルーシブな社会を目指すには、まず個々の特徴を知ることが第一歩となります。

統計のギャップ

補聴器メーカーの調査1によれば、日本で補聴器必要としている方は、1430万人です。人口比で約11 . 4%にも及びます。

しかし、厚生労働省の調査2による聴覚障害者は33万5千人、わずか2 . 7%です。
なぜこれほど差があるのでしょうか?

厚生労働省の統計は、
《障害のある人》ではなく、《障害者手帳を持っている人》
の統計だからです。


障害のある方は、皆さん障害者手帳を持っていると思われるかもしれませんが、そうではありません。
障害者認定には、いくつものハードルがあります。
そしてこのハードルは日本独自の厳しい基準のため、障害者全体でみても、先進諸国の障害者の割合が20%前後であるのに対し、日本は7 . 4%と半数以下です。

OECD諸国の人口に対する障害者の割合
OECD諸国の人口に対する障害者の割合

遺伝学、病理学的に日本に障害者が少ないはずはありません。

この違い理由はいくつかありますが、障害者の認定制度の違いも影響しています。
聴覚障害を例にとると、WHO では両耳で20dB以上を難聴と規定し、日本聴覚医学会 3は、
25dB以上40dB未満を軽度難聴、40dB以上70dB未満を中等度難聴、70dB以上90dB未満を高度難聴、90dB以上を重度難聴と規定しています。

しかし、我が国の障害者手帳発給基準は純音聴力70dB以上、つまり高度難聴以上を障害者としています。
(dbは音圧レベルで聞こえ始める音の強さを表します。この値が大きいほど聞こえにくいことになります)

ちなみに、スウェーデンでは、基準は設けておらず、本人が聞こえにくいと感じれば聴覚障害者として認定されます。

知的障害においては、障害者手帳に相当する療育手帳の発給基準は、自治体ごとに異なる、という変な事になっています。

聞こえない人、聞こえにくい人は、あなたの身近にもきっといらっしゃいます。

難聴の種類

一言に聞こえにくいといっても、器官に病変がある場合や心理的な要因、高齢化による影響などその原因と症状は様々ですが、比較的多いとされる3種類の難聴を取り上げます。

  1. 伝音(性)難聴
    • 音を伝える中耳、内耳が炎症などを起こし機能が低下し、音が小さく感じる。
    • 健聴者が耳を塞いだときのような聞こえ方。
  2. 感音(性)難聴
    • 音を感じ取る器官に起因する難聴。
    • 音にひずみ(感じる周波数域にばらつきがある)が生じる。
    • 音声や音の種類を判別しにくい。
  3. 混合難聴
    • 伝音性難聴と感音性難聴の両方の症状がある。

これらを補う方法として、補聴器や人工内耳を用いる方法があります。

補聴器のこと

補聴器は、音を大きくするだけの器具ではありません。

その人の聞こえ方の特性に合わせて、周波数や増幅度を細かく調整した精密機械です。

なので水や汗、大きな衝撃は禁物です。

もしも、補聴器の落とし物を拾った場合は、近くの交番か眼鏡屋さんに届けてください。

補聴器はとても高価です。

また医療器具として登録されているので、持ち主を探すことができる可能性があります。

難聴と文字言語

健聴者が新たな言語、例えば「Book」という単語を勉強する時には、必ずあたまの中で「ブック」と発音して<音>として言語を覚えます。
読めなくても、書けなくても、「ブック」という音を聞けばそれが本を意味することがわかります。

しかし生まれながらにして、聞こえない方(ネイティブサイナー)が、文字言語を習得するのはとても大変です。
音がわからないので、頭の中で『読む』ということができないためです。
ネイティブサイナーにとって、文字は記号の羅列であり、ことばは、記号とモノや行動の意味を関連付けつける必要がありこの作業は容易ではありません。

そのため、長文の読み書きが苦手な方も少なくありません。

『聞こえない人には、文字で示せばいい』は、安直な配慮です。

ネイティブサイナーの中には、文章が苦手な方もいらっしゃることを意識し、

できるだけシンプルで短い文章で伝えることを心がける必要があります。

手話という言語

聞こえない方が使う手話にはいくつかの種類があります。

  1. 日本手話
    • 古くからろう者の間で使われる手話。独自の文法があり、話し言葉の文法とは異なる。
  2. (日本語)対応手話
    • 話し言葉を手話表現した手話。文法は話しことばのまま。
    • 話し言葉を理解していないと、解読は難しい。
  3. ハンドサイン
    • 手話ではありませんが家庭内や友達同士で使うサイン表現として使われます。

ろう者さんの間では、「日本手話こそが<ろう文化>であり、対応手話は聴者のための手話」といする考えも根強くあります。

また、前項で触れたように、ろう者の中には長文が苦手な方もいらっしゃいます。

ネイティブサイナー主に日本手話に馴染んでいるため、話し言葉をそのまま手話表現した、対応手話は、理解が難しい場合があります。

手話単語をたくさん覚えただけでは手話通訳士にはなれません。

手話通訳士は、話し言葉を要約し、日本手話に翻訳するという極めて高度な技能をもった人たちです。

スポーツだけではない

運動機能に問題ない人であっても、聞こえない、聞こえにくいことで数々の生きづらさがあります。

これはスポーツをする時にだけ起きていることではありません。

病気や事故で突然聴力を失う人も少なくありません。

豊かな社会になるには、もっとお互いの事を知り合う必要があるように思います。


  1. 医療機器ニュースサイト シバンストの調査記事 (2024年5月閲覧) ↩︎
  2. 厚生労働省 令和5年度構想労働白書 資料編 「障害の種類別にみた身体障害者(在宅)」 ↩︎
  3. 日本聴覚医学会 『難聴対策委員会報告 ‐難聴(聴覚障害)の程度分類について』 ↩︎
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この記事を書いた人

KUA TATSUのアバター KUA TATSU

芸術大学院でミュージアムの社会的包摂や芸術教育に関する研究をしていました。
プロフィール写真は子供の絵、ではなく私が描いたものです!
ご覧のようにアート作品を生み出すことはできませんが、アートと社会の間の通訳のような存在になれることを目指しています。
・学芸員
・国際博物館会議(ICOM)会員
・美術による学び学会(研究会)

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