パラリンピック
2021年は1年遅れで、東京パラリンピックが開催され、スポーツを通じた国際交流、障害理解の促進が期待されます。
パラリンピックには、機能障害、視覚障害、知的障害のクラスが設けられていますが、聴覚障害のクラスはありません。
聴覚障害者は、主に国際聴覚障害者スポーツ協会、ICSD(International Committee of Sports for the Deaf)が主催するデフリンピックがその舞台となります。
第24回夏季大会は2022年4月にブラジルで開催されました。
なぜデフリンピック?
オリンピックとデフリンピックは別々に開催されるのは、1995年にIPC(国際パラリンピック委員会)からICSDが脱退したことが原因です。
国際ろうスポーツ委員会 会長ドナルダ・アモンズ(Dr. Donalda K. Ammons 1953)は、当時を振り返り、IPCから、ろう選手の参加増加に伴う手話通訳の”経費負担の増額”か、ろう者選手の参加を制限するために”競技種目の縮小するか”のいずれかを迫られたことが脱退を決意した理由であると報告しています。
その後、ICSDにより「国際ろう者スポーツ大会」は独自に運営され、2001年にIOC(国際オリンピック委員会)から「デフリンピック」の名称を正式に認められます。
スポーツとろう者
アモンズは、前出の報告書で、
彼ら(ろう者)は長らく、コミュニケーションの困難を味わい続け、わけても、『聾』であるがゆえに、社会の中でやっている能力が劣ると誤解される経験を重ね、否定的なステレオタイプを押し付けられてきた。『おし、つんぼ』という古い言葉があるが、これは『口のきけない愚鈍な者』、『馬鹿』、『能力がない』という意味を含んでいる。世間は常にろう者を知的に劣った、言語の理解出来ない者とみなし、市民として周縁化した存在として扱ってきた。
一般財団法人 全日本ろうあ連盟 スポーツ委員会 ウェブサイトより
と述べ、聴覚障害者が不当に社会から疎外されてきたことを憂いています。
「聞こえなくても、スポーツはできるでしょ?」とお考えの方も多いかもしれません。しかし、球技やリレー、ボートや体操などの団体競技は音のコミュニケーションに大きく依存しています。いっしょにスポーツを楽しむには、会の運営だけでなく競技そのものにも、聞こえない、聞こえにくいことに対する配慮が必要です。
聴覚障害者は、ある時は運動機能に支障がない健常者と見なされ、ある時はコミュニケーションが難しい人と見なされ、またある時は根拠なく劣った人と見なされるなど、運動障害や機能障害を中心とする他の障害者とは異なった特有の生きづらさを抱えています。
インクルーシブな社会を目指すには、まず個々の特徴を知ることが第一歩となります。
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