障害は特別なこと?

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メディアでは、障害者を「マイノリティ(少数派)」と総称することもあるようです。

障害のない人がマジョリティ(多数派)で、障害がある人がマイノリティ。

社会をもっと良くするには、少数派の意見にも取り入れなきゃいけない。確かに少数の意見にも耳を傾けることは重要なことです。

しかし、これが「障害者=少数派=障害は特別なこと」というイメージをつくりあげてしまいました。

障害は「どこかの誰かの特別なこと」であって、自分とは関係ない。


そんな思い込みです。

誰でも障害者になり得る

生まれたときから障害がある方もいれば、病気や事故、加齢などによって障害を持つに至った方もいます。

 統計によれば、病気や事故、災害、加齢によって障害者になる方の割合は、年齢とともに増し、65歳未満では、55.9%、65歳以上になると89.4%にも達します。

 病気やケガ、加齢は、誰も避けることはできません。つまり、障害は「どこかの誰かのこと」ではなく「自分のこと」でもあるのです。

障害は決して特別なことではありません。

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65歳以上の障害者で、障害を持つに至った原因のうち

病気、ケガ、災害、加齢の割合

「国民の福祉と介護の動向2017/2018」厚生労働統計協会

世界と日本の障害者数

「#We The 15」 オリンピック・パラリンピック2020の閉会式で、こんなフレーズが放映されました。

15という数字は、世界人口に占める障害者の割合15%を示しています。

障害者の数は、国や地域によって差があり、ヨーロッパは概ね18%、アメリカでは10.5%、日本は約964万人、人口比で7.7%です。

なぜ、世界と日本に約2倍の違いがあるのでしょうか。

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世界の障害者の割合

(#WeThe15ウェブサイトより)

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日本の障害者の割合

(厚生労働省統計より)

日本の障害者は世界より少ない?

遺伝学的、病理学的にみても、日本だけ障害者が少ないはずはありません。この違いの大部分は、障害者福祉制度の違いによるものです。

 例えば、WHOでは聴覚障害の基準について、26〜40デシベルを軽度難聴、41〜55デシベルを中等度難聴、56〜70デシベルを準重度難聴と規定しています。これに対し、日本では純音聴力70デシベル以上が聴覚障害として認定されます。

 このように、障害者統計は、その国の基準で集計された結果であり、世界が同じ基準で集計したももではありません。


 仮に、日本の障害者の割合が世界と同水準であるとすれば統計値の2倍、2千万人の以上の方に何らかの障害があるという試算になります。

「ジェンダー、国籍、年齢……ある属性をとればマジョリティだった人が、ある属性や環境においてはマイノリティに容易になり得ます。そして、そのあらゆる側面で、マジョリティとマイノリティの間での力の不均衡は発生します。そうした不均衡は個人ではなく社会が生み出すものだと知ることで、それまで感じていた、生きづらさやコンプレックスを相対化できるかもしれません」

公益財団法人日本ケアフィット共育機構

 『TEAM DARE-TOMO』

東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター准教授

星加良司インタビュー記事より抜粋 https://www.carefit.org/liber_carefit/daretomo02.php

星加は、マジョリティとマイノリティの立場は容易に入れ替わると述べています。

障害者=マイノリティ、と固定化する考えには、転換が求められているように思われます。

「普通」という配慮

障害のある方を『社会的弱者』と呼ぶことがあります。障害者=弱者というイメージは、障害者は「優しく接するべき人」・「手を差し伸べるべき人」・「いつも困っている人」ような固定観念をつくってしまったように思います。

 確かに社会生活で弱者となる場面もありますが、常にそうであるとは限りません。実際には、障がいの種類や程度には個人差があり、当然ながら必要とする支援のタイミングや内容も大きく異なるためです。

 例えば、視覚障害の場合、弱視、色弱、視野狭窄、脳の機能に起因する視覚失認など、障害の種類も程度も様々です。さらに、生まれながらにして障害があったのか、事故や病気が原因なのか、障害を持ってからどれくらいの時間が経過しているか、などによっても必要とする支援の「内容」も支援のを要する「時」も異なります。

 障害者を「いつでも弱者」とみることは、当事者を深く傷つけてしまうこともあります。

障害とどのように向き合っているかは、個人によって差異がありますが、生まれながらに障害のある、ステラ・ヤングは障害者を特別視せず「普通に接する」ことの重要性を訴えています。

日本語字幕が表示されない場合は、下のリンクからご覧ください。新しいタブが開きます。

https://www.ted.com/talks/stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much ?language=ja

いっしょに考える、という支援

グラフは、障害のある方に行ったアンケートで『障がいがあるからできない、と決めつけずに、できることを一緒に考えて』と回答された方の割合です。

 重度の障害をお持ちの方には、常に支援が必要ですし、中度や軽度障がいをお持ちの方にも、支援や配慮は必要です。しかし、最初から出来ないと決めつけてしまうことは、当事者を傷つけてしまうこともあります。

 手助けすることだけが『支援』でなく、できることを一緒に考えることも重要な『支援』のように思います。

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内閣府調査 「障がいのある当事者からのメッセージ」集計結果より


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