2022年博物館アンケート調査の概要


 この度は、突然のお願いにも関わらず、アンケート調査にご協力頂き、誠にありがとうございました。

2022年1月12日から3月7日にかけまして、268の博物館にご協力をお願いし、81件のご回答を頂きました。

不明確な設問意図、選択肢の設定不備などがあり、回答しにくい設問もあったかと思いますが、ご多忙の中、貴重な時間を割いて頂きましたことに、改めて深く感謝申し上げます。

 この度、ご希望のありました博物館様に、調査の概要及び結果をご報告させて頂きます。

深い考察には至っておりませんが、貴重なご意見、博物館活動に関する取り組み、また、本アンケートに対するご指摘などを頂くことができました。

つたない調査ではございますが、貴館の今後の運営や教育普及事業などのご参考になれば幸甚でございます。

2022年4月

ARTS FOREST

1.はじめに

 日本博物館協会が実施する博物館調査が全国の博物館約4,200館を対象に、2,300件あまりの回答を集計しているのに対し、本調査では、268館から81件の回答を頂きました。日博協の調査に比較して、非常に小規模な調査であり、ウェブサイトの【問い合わせ】フォームからアンケート回答を依頼させて頂くという、特殊な方法をとりました。従いまして、本アンケートの統計的な信頼性は高くありませんが、博物館の運営状況、課題等の実際の声を直接お聞きできたことは、非常に意義深く、貴重な情報と多くの示唆を頂くことができました。

 また、設問の意図や内容に不備がありましたことを、お詫び申し上げますとともに、そのような設問にも積極的に、ご回答頂きましたことに、重ねて御礼申し上げます。

2.目的

 2021年12月文化審議会が『博物館法制度の今後の在り方について』を公表し、その中で今後の博物館に求められる3つの使命と5つの機能の例を示しました。

<使命>

・自然と人類に関する有形・無形の遺産等を保存(保護)し、継承する

・資料に関する調査・研究を行い、それに基づき資料の価値を高める

・資料を通じて学びを促し、文明や環境に関する理解を深める

<今後必要とされる機能の例>

・交流・対話、市民による創造的活動の促進と支援

・持続可能な未来と平和について対話・学習する機会の提供

・地域の福祉(健康・幸福、生活の質)の向上への貢献

・社会的包摂・相互理解・多文化共生への寄与

・地域社会の活性化


 このように、答申では従来の資料を中心とした博物館活動に加え、健康や福祉、排除や分断など社会問題への対応、地域の活性化など、非常に幅広い分野への対応を求めております。

 しかしながら、日博協の調査によれば、博物館の約49%が専任かつ常勤の学芸系職員を配置しておらず、類似施設においてはこの値は約33%に低下します。更に、学芸系職員を配置していない館は、全体で16.5%、類似施設では、26%にも及んでおります(表−1)。また、日博協調査では、この他にも資料購入予算の問題、職員の雇用形態の問題、資料のデジタル化など多くの課題が指摘されました。

 現状でも多くの課題を抱える博物館が、審議会が求める役割、特に、福祉・健康、社会的包摂といった、従来の博物館事業では中心になかったテーマに対応することは容易ではないと拝察いたしました。

 そこで、博物館の中でも、我が国の博物館の7割近くを占める、市町村立博物館、首都圏以外の県立館を中心にご意見をお伺いし、解決の糸口を探りたいと考えました。


 文化審議会の答申では、この他にも文化芸術基本法、文化観光推進法などを下敷きとした『観光』というワードが随所に盛り込まれました。社会教育施設たる博物館の役割と、文化観光施設の役割をどのように関連づけ、あるいは区分するのか、今後議論が展開されるものと思われますが、今回の調査ではこの部分には触れませんでした。

表−1.学芸系職員の配置状況 (日本博物館協会「日本の博物館総合調査」より)

調査数専任兼務のみ配置して
いない
合計
常勤非常勤
のみ
常勤非常勤
のみ
登録61572.5%6.8%18.2%0.8%1.6%100%
相当25969.9%6.6%17.4%1.9%4.2%100%
類似1,25433.6%8.7%24.9%6.5%26.3%100%
全体2,12849.2%7.9%22.0%4.3%16.5%100%

出処:日本博物館協会『令和元年 日本の博物館総合調査報告書』p.80 表3-2-7

表−2.設置者別博物館数

設置者登録+相当類  似合  計
1251252.2%
独立行政法人3043731.3%
都道府県1692404097.2%
市(区)5322,3522,88450.4%
7680087615.3%
61361422.5%
(市区町村小計)(614)(3,288)(3,902)(68.2%)
組合2-20%
財団法人・社団法人・公益法人3081454537.9%
その他16359375613.2%
合計1,2864,4345,720100%

文部科学省 社会教育調査 2017年博物館類似施設統計(表No,122)/2018年登録・相当施設統計(表No,94)より作成

2.調査の方法

 インターネットクラウドサービスGoogleフォームを用意し、博物館のウェブサイトに設置された【問い合わせ】から、アンケート調査へのご協力をお願い致しました。

 ご依頼しました館は、日本博物館協会ウェブサイト全国美術館会議ウェブサイトインターネットミュージアムウェブサイト、自治体ウェブサイトに情報を登録されている館のうち、前述の【問い合わせ】フォーム、もしくはメールアドレスを公開されている館に限られます。

 地域的には、全国を対象に、都道府県立1館以上、市区町村3館以上、財団・企業系1館を目安に、5館以上とするよう抽出致しましたが【問い合わせ】フォームの有無により、若干の地域差があります。

 ご依頼に際し、約500ほどのウェブサイトを確認しましたが、下記のようなウェブサイトも非常に多く、依頼できたのは、268館となりました。

 ①館名だけの表示で博物館の概要がわからない

 ②【問い合わせ】方法が、電話・FAXのみ

 ③【問い合わせ】が設置されていない、もしくは階層が深くたどり着けない

 ④館の概要、もしくは【問い合わせ】のリンク切れ

 ⑤問い合わせに際し何らかの書類提出を求める

 ⑥入力フォームの書式設定の誤りで入力できない

 ⑦アンケートを受け付けない旨の注記がある

表−3.設置者別アンケート依頼博物館

設置者依頼回答回答率
2
53
1
3
(小計)(60)(18)(30.0%)
109
7
8
1
(小計)(125)(45)(36.0%)
財団法人
社団法人
公益法人
58
企業2
大学7
個人16
(小計)(83)(18)(22.8%)
合計2688130.2%

表−4.種類別アンケート依頼博物館

種類依頼
歴史・民族60
美術・工芸192
科学5
自然史7
庭園1
総合3
合計268

3.ウェブサイトのセキュリティ

 調査の主旨とは異なりますが、ウェブサイトのセキュリティ(暗号化の有無)についても合わせて確認させて頂きました。

 アンケート依頼しました268のサイトのうち、79のサイト(約30%)が暗号化されておりませんでした。さらに、暗号化されていない79のサイトのうち22のサイトは問い合わせフォームに、氏名、メールアドレス、電話番号などの記載を促しており、個人情報漏洩の危険性がある状態でした。


 暗号化サイトは、[http]の後ろに[s]が入り、[https://]で始まり、アドレスバーの横に鍵マークが表示されます。[http://]のサイトは、ブラウザの設定によっては「保護されていない通信です」というコメントが表示され、ウェブサイトを閲覧できない場合もあります。


暗号化されていなくとも、すぐに情報が漏洩するわけではありませんが、もしも貴館のウェブサイトが、http://○○○○で始まっているようでしたら、ウェブ管理者に暗号化(SSL化)の検討を相談されることをおすすめします。サイトの暗号化には、高度なものから簡易的なものまで、いくつかの方法がありますが、無料で提供される簡易的なSSLでも一定の安全性が確保できます。


©ARTS FOREST COPYRIGHT 2021, ALL RIGHTS RESERVED